ベスト・コンサート②~チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル

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1993年4月28日、東京芸術劇場で聴いた、セルジュ・チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィルのチャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」は、私の音楽観をひっくり返すような衝撃的な演奏でした。
私は、チャイコフスキーの曲がそれほど好きではないのですが、「悲愴」だけは別格です。それまでにも、カラヤン、ムラヴィンスキーといった巨匠の名盤や、大フィルや新日本フィルを振った朝比奈のライヴで、何度も感動してきました。
しかし、チェリビダッケは、聴く者の胸をわし掴みにするような説得力で、数多くの名盤・名演をはるか上回っていました。

ブルックナーのアダージョのようなゆっくりとしたテンポで、一小節ごとにかみ締めるように、巨大な建造物を積み上げていくように、音楽が紡がれていきます。一階席後方で聴いていても、巨匠の息遣いやオーラが、我が身の背筋を凍らせるようです。
最強音でも、あくまで透明な音色で、完璧なリズムと音程が徹底しているため、全く音は濁りません。長い長い第一楽章のクライマックスで、私は身じろぎもできず、ただただ涙をこらえるのに精一杯でした。
第四楽章、心臓が止まるかのようにコントラバスの刻みがゆっくりになって、消えゆくように曲は終わります。お客さんは誰も、身動き一つしません。息をする音が周りに聞こえてしまうのもためらうほどの時間が続いていました。もし、心臓の弱い方が居合わせていたら、かなり危なかったでしょう。

私にとって、これが唯一無二の「悲愴」体験になりました。もう、他の「悲愴」のどの演奏も、私を満足させることはないでしょう。今でも、あの体験を思い出しただけで、感度に打ち震えることがあるほどです。

チャイコフスキー : 交響曲第6番ロ短調「悲愴」

チャイコフスキー : 交響曲第6番ロ短調「悲愴」

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